人にも建物にも刺激が少ないようにやさしい素材を選びながらの改修です。
今では貴重な障子です。
この状態は冬用ですが、夏になれば風が通るように障子部分を取り外し,桟だけにできます。
色が黒いのは昔からこの場所は台所で竈でいぶされたからです。
床は桧のようにも見えますが地場のさわらで厚みは30mmとしました。
さわらは柔らかくとても足にやさしい木材で一番の特徴は香りがほぼないことです。おひつなどに使われるくらいですから匂いの無い、とても少ない木材で、見た目桧に似ていますが香りをかげばわかります。
さわらにした理由は桧のような強い香りを避けたいというご要望から、できるだけ新築の香りがしないような体にやさしい素材撰です。
壁の漆喰はモンモナイトを主成分としたもので漆喰独特の香りがしません。
モンモナイトは粘土で化粧品の原料に使われたりもしているそうです。
一般的な漆喰はやはり独特なにおいがします。においに敏感な方は施工前にサンプルで確認することをお勧めします。
古い箱階段です。
昔は土間から2階に上がったようです。
がたつきがひどかったので杉板の裏張りをして補強しました。
新しい木材と色目が合いませんね。少し違和感を感じてしまいますが今回は余計なものは施さないというコンセプトでしたのでそのままです。
違和感を解消したいときは柿渋や弁柄などで色味を整える方法があります。
また輸入材ですが植物系のオイル塗料などでよいものがあります。揮発性の溶剤を使った塗料などは室内使用は控えるべきと考えています。
また古い木材の色はそのものの経年変化だけではなく、燻されてりしても色が付きます。
色味を整えるために洗ってしまうという方法もあります。
どう仕上げるのが良いのかそれは住まう方の暮らし方でもありますね、いいも悪いもありません、ただ言えるのは室内にはできるだけ化学物質は使いたくないということです。
この写真だけだと新築のように見えますね。
理由の一つは民家に特徴的な柱が見えないからです。
ふつう古い建物の多くは真壁といい柱の厚みの中で壁をつくりますので外も中も柱が見えてきます、壁の厚みは断熱材など入りませんから薄いものなのです。
この写真のような柱の見えないつくりは大壁といい柱の外側で仕上げ材を張ります。
民家のスタイルを優先するのであれば真壁のままという手法当然ありますが、今回は人にやさしい温熱環境の向上もテーマの一つです。
壁の中にはしっかりと断熱材を入れました。
また真壁で困るのが配線関係です。
現代の暮らしは多くの配線が壁の中を通ります。
基本的には古民家の改修であれ暖かい住まいにすることは最重要課題だと考えています。
なので外周部はしっかり断熱して大壁仕上げ、内部は味わいのある昔からの真壁で仕上げたいところです。
さわらの床板が能舞台のように凛としています。
暗かった中廊下
瓦を剥ぎ、屋根に穴をあけ天窓を入れました。
夏に風も抜ける開閉式です。
気持ちも晴れやかになりました。
大きな家ではどこかに暗い場所ができてしまいがちです。
風が通り、光が入れば足元も見えやすく、年を重ねても安心できると思います。
昼間は照明をつけないで過ごしたい。
何とか明るくしたい、何とか風を通したい。といつも考えています。
懐かしいタイル絵のあるお風呂でした。
浴室内に風呂用のガス窯がある形です。
給湯は屋根の上のソーラー給湯機から、お日様の力を借りるのは大賛成、新しくしてもソーラーは活躍です。
浴槽はホーローです。
タイルも昔の工法団子張りで貼りました。
通常温熱を考えるとユニットバスを採用するところですが、今回はユニツトバスの樹脂の匂いや成分に納得できるものがなかったためお風呂はつくりました。
給水給湯ともにステンレス配管です。
通常は塩ビ管や華僑ポリエステル管をつかいます。
今回は塩ビ系の素材は極力排しています。
3本配管が見えますが黒いテープは井戸水の配管です。
井戸も健在なら積極的に使います。
ライフラインは予備があると安心できます。
タイルの風呂ですから十分に断熱を行います。
これは室内側です、アレルギー反応が出にくいポリエステルの断熱です。
キッチンは北向きで一般的な配置でした。
ダイニングと一体空間なのでどうしても雑然としてしまいます。
今回はキッチンの配置も含め見直しました。
カウンターキッチンとしました。
キッチン出窓であったところを掃き出し窓に替えました。
夏は北側からの涼しい風が入りはいり、障子を入れたおかげでとても落ち着いた空間になりました。
つづく